文:木村圭介
カントオロワ ヤクサクノ アランケプ シネップ カイサム
天から役割なしに降ろされたものは一つもない
これは北海道に先住する民族、アイヌの諺です。
アイヌの人々は、様々なものに魂が宿ると考え自然の恵みを無駄にしない暮らしを送る精神性をもちます。この考え方は大量生産・大量消費を主流とする今の資本主義社会において、決して忘れてはいけないものです。
そこで私達RIV ROBUSTが着目したのが、「北海道マテリアル」でした。マテリアルというのは、フライフィッシングやテンカラ釣りで使う毛鉤を作るための材料を指す言葉です。その主だったものは動物の毛や鳥の羽、または人工的にそれらを模倣して作られた素材です。それらのマテリアルの組み合わせや巻き方を考えて作った毛鉤で、魚を釣ることを楽しんでいます。

RIV ROBUSTの代表的な毛鉤「スティミュレーターヴァリアント」
北海道には様々な野生動物が暮らしています。
道の調査では、哺乳類だけで見ても2万種近い数が挙げられています。その中でも、古くから大陸から分かれ海に囲まれていた北海道には固有種が育まれてきました。ヒグマやシマエナガは全国的にもその名が広く知られているのではないでしょうか。そんな生物学的に見ても貴重な固有種ですが、狩猟の対象となっているものもいるのです。毛皮や肉に商業的価値があったり、畑を荒らす・人に危害を加えるなどの害獣であったりすることがその理由となります。

RIV ROBUSTで扱う「北海道マテリアル」は、基本的には狩猟で獲られた動物の毛皮の端切れを用いています。唯一エゾリスだけはかつての乱獲によりその数が減らされてしまい現在は狩猟対象となっていないため、かつて毛皮にされたものを入手し商品化しています。本来捨てられてしまうはずだった素材も、マテリアルとしてであればさらに活用することができるのです。アイヌの諺にも通じるこの商品化の方法は、我々が取り組む「to The Earth」にも代表される、豊かな自然を残していきたいという思いを表すものでもあります。

北海道マテリアル「エゾリス」

北海道マテリアル「ヒグマ(金毛)」

北海道マテリアル「エゾシカ」

北海道マテリアル「キタキツネ」
しかも、北海道マテリアルはそれらを無理やり商品化したのではありません。寒さの厳しい土地で育った固有種は、毛鉤を作るのに適した特性をもつものが多くいることが分かっています。例えばヒグマ。その体毛は細く多くそして中空になっています。これがドライフライのウィングに用いるのに大変都合がよいのです。キタキツネは豊富なアンダーファーと柔らかく長いガードヘアーをもっており、ニンフやストリーマーを作る際に非常に適しています。
これらのマテリアルを使って、北海道の鱒を思い浮かべながらゆったりとフライを巻き、そして北海道の雄大な川に立ち、鱒と向かい合う。ここに魅力を感じることフライフィッシャーの方は少なくないでしょう。

一般的なマテリアルと比較すると流通量が少なく、その価格帯が上がってきてしまうことを避けることはできませんが、その分の付加価値はある、と自信をもってお伝えすることができます。これらの北海道の自然の豊かさを感じられるマテリアルたちが皆様のお手元に届くことを心から願っています。
